ライヴができればいつもゴキゲン!

『ライヴ命』の子供ばんど

 

 

 

 

とりあえず子供ばんどだ。

このグループ、「EAST WEST」の昨年度の最優秀グループ賞を受賞し、

しかもライヴ・バンドとしての精力的な活動ぶりにも定評があったが、

ようやく、この1021日にレコード・デビューを飾ることになった。

ハード・ブギを貴重にしたエネルギッシュな演奏に加えて、ラヴリーで

エキセントリックなライヴ・パフォーマンスが最大の魅了で、ぼくなど

ははじめてみてすっかりファンになってしまったが、デビュー・アルバム

WE LOVE KODOMO BAND」も、とても好感の持てるアルバムに仕

上がっている。

「ライヴではすごく動きまわるでしょ。すると音も動いているような錯覚

にとらわれるけど、レコードではどうしても音が動かない。その辺の迫力

の違いが心配なんですけどもね」と語るのは、うじきつよし。

リード・ヴォーカルとギターを担当し、グループのリーダーでもある。

彼の言葉を借りるまでもなく、子供ばんどのステージに接した人にとっては

いくぶん物足りなさを感じるかもしれないが、だからといって、そこでは

彼らの魅力が薄められているわけではない。

 そもそも、子供ばんどは、うじきつよしが6年前に高校1年のときに結成

したグループで、その後何度かメンバー・チェンジを行って現在に至っている。

当時からグループ名はかわっていないが、結成当初のメンバーで残っているのは

うじきひとりである。ギターの谷平こういち、ドラムスの山戸裕、ベースの湯川

トーベン、そしてうじきつよしという現在の顔ぶれに揃ったのは2年ほど前のこと。

以降、「呼んでくれるならどこへでも行って演奏する」ことを信条に、ライヴ・バンド

として精力的な活動を開始。この間、通算すると1年間でこなしたステージ数は

100を軽く上まわるという。

はじめの頃は、子供ばんどとういグループ名のために「ハード・ロック

やってます」って言っても、なかなか信用されずに出演の申し込みをよく

断られたそうだ。

最近では東京周辺だけでなく、大阪や名古屋、さらには仙台などでも馴染みの

ライヴ・ハウス、ファンができて熱狂的に迎えてくれる。

今回のレコード・デビューも、「内容に関していえば、いままで応援してくれた

お客さんをがっかりさせちゃうんじゃないかと思って不安なんです。

でも、レコードを出すって言うと、地方のお客さんがすごく喜んでくれるん

ですよね、それがとても嬉しい」。

 もっとも、彼らはレコードえお出すためにこれまでの活動をしてきたのではない。

この2年間あまりの間に、何度かレコーディングのはなしもあった。

とくに、「EAST WEST」で最優秀グループ賞を受賞したとき、それをきっかけ

にしてレコーディングの誘い、申し込みは激増した。それでも断り続けてた。

うじきつよしにとって、以前メンバーが引き抜かれていたのも理由のひとつだった。

「レコード出すから、メンバーが抜けていき、結局ぼくひとりが取り残される

形になった。

それに、レコード出した連中も決して結果的に良かったと思えなかった」。

また、過去優れたライヴ・バンドには常に課せられてきたステージでの魅力を充分に

レコードに封じ込めないという不安もあった。「ステージみていると上手くて

凄いと感激させられるグループでも、レコードになっちゃうと、きいていて

淋しくなってくることがある。レコードづくりって、とても難しい問題が

あるんだろうと思っていた。」

 だから、レコーディングに対して期待していなかったし、むしろ恐怖感さえあった

そうだ。

それになによりも、ライヴが大好きだというのが、最大の理由だった。

「ずっとライヴ活動を続けていって、お客さんのみんなから、どうしてもレコード

出さなきゃ困ると言われるようになるまで待つつもりだった。」

 そういえば、ステージでみる彼らはすばらしく楽しそうだ。さまざまなアイデアを

駆使して楽しませてくれるが、嫌みではない。場所狭しと走りまわる彼らのステージ

をみていると、それはまるで、ちょっとした運動会のようにも思えるほどだ。

そしてこのグループには、まったくといっていいほどぎらついたものは感じられない。

もちろん、バラードもきかせるが、徹底したハード・ブギでたたみかけてくる演奏

にしても、ねじ伏せてしまうような強引さはなく、どこか表情にふくらみがあって

ほのぼのとさえさせる。

 結成当初は、レッド・ツェッペリンやディープ・パープル、モップス、キャロル

などのコピーをやっていたらしく、一時期ハンブル・パイに深く傾倒したことが

あった。

事実、彼らの演奏にはそれらからアイディアを借りたものから影響されたところも

みいだせる。加えて、うじきつよしが多少照れながらも「ライバルだと思っています」

と語るAC/DC、さらに「ファンだった」というRCサクセッションなどにも通じる

ものがあるのは、おそらく多くの人が指摘するだろう。

 自分たちで曲をつくるようになったのは、ハンブル・パイに深く傾倒したその

しばらく後からだそうで、現在はすべてオリジナルである。もっとも、

このグループの代表曲として知られる「サマータイム・ブルース」は、

ご存知のようにザ・フーのヒット・ナンバーに、日本語の歌詞をつけたもの。

しかし、見事に彼らなりに仕上がっていて、この曲をきいていると、

子供ばんどというグループ名に、ニュアンスとして深みや広がりがでている

だけでなく、時代を踏まえた緊迫感がつたわってくるのである。

それは、彼らの演奏にも言えることで、ぼくが強く惹かれたのは、

ハード・ブギというオーソドックスなスタイルながらも、

そのスタイルを飛びこえた今日性を、彼らの演奏にみることができるからだ、

それはすばらしく新鮮にきこえる。